岡本 清文さん 建築家
近畿大学 文芸学部 文化デザイン学科 教授
肩の力が抜けた蝶ネクタイ姿が印象的な岡本さんにお話を伺いました。
大学の教員になる前は、大手ゼネコンの設計室に勤務していました。
設計室の先輩にお洒落な人がいて、いつも蝶ネクタイ姿でした。それが格好良くてね。
僕もファッションに興味があり、蝶ネクタイはいくつか持っていたんですが、当時は、パーティーかクラシックコンサートなんかに行く時に限って着けていました。
丹下健三にル・コルビュジエ・・建築家といえば蝶ネクタイという時代がありました。
竹中にもかつては、そういうお洒落の伝統があったんですが、僕が入った時には蝶ネクタイで勤務している人はもういませんでした。
ネクタイという、誰がつけてもある程度カタチになるユニフォームに変わったんですね。
大学、とくにデザイン系の学部の教員という職業柄、服装はカジュアルです。学生にとって「身近にいるやや特殊な職業の大人」という役割であると考えるとフレンドリーな服装もいいかなと思います。
でも、僕の場合は「この人は何を考えてるのかよくわからない」という溝をつくりたい。「周りにこんな大人はいない」というような存在であるべきかなと考えています。
蝶ネクタイは独特な雰囲気があるでしょう。
いい具合に距離感をとるための道具でもあるんです。
もちろん、なにより、自分がいいなと思って好きでつけていますよ。
自分で選んだものを認められると、満足感や自己肯定感が高まります。
僕は学生時代、サーファーで長髪で着物を着て。めちゃくちゃなんですけど自己肯定感は高かった。
母が人と違っているということに肯定的な人で「変わってる」は褒め言葉だったんです。
今の学生たちは自己肯定感が低いですね。目立つこと、同一化していないことへの恐怖心が強い。
でも、それは社会がそうしているのであって、彼らのせいじゃない。
変わっていても大丈夫なんだと背中を押して、自己肯定力を高められたらいいなと考えています。
学生はたくさん勉強して、教養を身につけてほしい。
そうすれば、おおぜいの中で堂々と質問したり、自分の頭で考えて判断したり、
自分の基準で行動する勇気が出てくると思いますね。
Comments