バーで飲むということは、その文化の一端を自分が担うということです

東司丘興一さん 

ジャズバー ムルソー・セカンドクラブ オーナー



やわらかい音色のジャズが流れ、ピカピカに磨き上げられたグラスと酒瓶が並ぶ、大阪、北新地本通りの老舗ジャズバー 、ムルソー・セカンドクラブ。仕立てのよいベストに蝶ネクタイ姿で漆塗りのカウンターに立つのは、オーナーの東司丘さん。

コロナで緊急事態宣言が出ていた時期は、バー営業ができないので「それなら昔やっていたジャズ喫茶をしようやないか」と形態をかえて営業を続けた。



ジャズ喫茶のお客様はジャズを聴くためにご来店されます。鑑賞に適した音量でジャズをかけたり、珍しいレコードをご紹介したり、バーとは別の楽しみがありますね。その時しかできない仕事でしたので、それはそれで面白いと思いました。

ジャズ喫茶を開業したのは高校在学中で、その後、大学に進学しました。開高健の後輩にあたります。学生運動が盛んな時代で、就職は考えず、喫茶からバーに変えて事業を拡大し、大阪市内で数件のジャズバーを経営していました。コロナ禍の煽りをうけ、50年にわたって営業を続けてきた北新地の2軒のバーを閉店しました。


当時、僕がジャズ喫茶からバーに営業形態を変えたのは、コーヒーもいいけど「お酒を飲みながら語らうジャズバーの方が楽しいよ」という結論に達したからなんです。ジャズバーというスタイルが素敵なのは、やはりお酒の愉しみがあるからですね。


音楽を抜きにしても、バーテンダーのカクテルやお客様の理念でつくられた遊びがあり、奥行き、深みがあります。お酒、音楽、文学、歴史。文化というものは絡みあっているんです。バーは文化ですから、お酒が介在しての楽しみは別次元ですね。


バーで飲むということはその文化の一端を自分が担うということです。カウンターで人と人が出会い、つながりが生まれることも文化的な局面の一つですね。ファッションとお酒もリンクしていて、お客様もおのずとステキな方が集まってこられます。お洒落な方は所作も飲み方も格好いいですね。僕はジャズバーが最高やと思ってます。

ダンディな東司丘さんは、蝶ネクタイ歴50年。プライベートでもずっと蝶ネクタイを楽しまれ、お店の一角には、愛用されていた年代物の蝶ネクタイが飾られています。



蝶タイの趣味は変わらないですね。昔、手で結ぶタイプの蝶ネクタイをしていた時期もありますが、生地が傷んできますでしょう。着けているとだんだん歪んできたりして、ボウの形が崩れたら結び直すしかない。結局は、あらかじめ結んである蝶ネクタイを選んで使うようになりました。40年ほど前のお気に入りもとってありますよ。